機関投資家動向
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日経平均株価は今年に入り14%上昇(10日時点)し、欧米など世界の主要市場を上回っている。しかし、円相場が対ドルで34年ぶりの安値水準に下落していることを受け、ドルベースの上昇率はわずか3%にとどまり、海外投資家からすると低調なパフォーマンスだ。同期間の米S&P500種株価指数の上昇率は9.5%、ドルベースの香港ハンセン指数は11%に達する。
ブラックロック・ジャパンの番場悠アルファ運用本部長はブルームバーグのインタビューで、「通貨安が続けば、グローバル投資家にとって日本株への投資は難しくなる」と指摘。海外投資家と日本について話す際、「為替のことは間違いなく全員の頭の中にある」と述べた。
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デービッド・コスティン氏率いるゴールドマンのチームは、収益の見込めない企業は事業継続のために「身売り先を見つけるか、新株発行で株式を希薄化するか、もしくは現在の高金利で債券を発行せざるを得なくなる」との見方を示した。こうした企業の大半はテクノロジー関連だという。
コスティン氏は10日付のリポートで、いわゆる「不採算グロース株」はキャッシュフローを生み出せるのが「遠い将来」だと予想されるため、金利が上昇すると予想利益に基づく現在の価値が大幅に目減りすると述べた。
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円相場の変動をヘッジした日本株上場投資信託(ETF)が大きく復活し、過去最高値を更新して資金流入も一気に膨らんでいる。
「ウィズダムツリー日本ヘッジド・エクイティファンド」(ティッカー:DXJ)は5月6日に上場来高値を更新。トヨタ自動車などの保有銘柄の上昇により、過去1年で約45%上昇した。
同ファンドは円安をヘッジしながら日本株に投資する。米国の金利が相対的に高いためドルが上昇すれば利益が帳消しになると懸念する投資家を引きつけている。
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米証券取引委員会に提出された株式保有報告書「フォーム13F」の分析によると、サウジの政府系ファンド、パブリック・インベストメント・ファンド(PIF)は3月31日現在、時価総額180億ドル(約2兆8000億円)程の米国株を保有。昨年末時点の350億ドルからはほぼ半減となっている。
報告書によると、PIFは6億ドル以上の規模だったアマゾン・ドット・コム、マイクロソフト、セールスフォースへの投資をなど、多数のテクノロジー株をもはや保有していない。同ファンドは、こうした銘柄も含みテクノロジー株の直接保有を、より少ない株数のコールオプションに置き換えた。
また、昨年末時点で保有していた米国の金融および旅行関連会社の株式も減らした。これには、ブラックロックへの6億200万ドル、カーニバルへの9億4200万ドル、ブッキング・ホールディングスへの7億5700万ドルのポジションが含まれ、3月末時点での保有額はすべてゼロ。
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著名投資家ウォーレン・バフェット氏率いる米投資・保険会社バークシャー・ハサウェイは15日、損害保険会社チャブの株式持ち分67億ドル(約1兆360億円)相当を明らかにした。規制当局への届け出で開示したもので、1-3月(第1四半期)末時点のポジションを反映している。
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資産家スタンレー・ドラッケンミラー氏とデービッド・テッパー氏の投資会社はいずれも、今年の米株高を推進してきた「マグニフィセント・セブン」と呼ばれる大型ハイテク株を売って利益を一部確定した。
ドラッケンミラー氏のデュケーヌ・ファミリーオフィスは1-3月(第1四半期)に44万1000株余りのエヌビディア株を売却し、持ち分は約1億5900万ドル(約246億円)相当になった。テッパー氏のアパルーサはアマゾン・ドット・コムとマイクロソフト、メタ・プラットフォームズの持ち株を減らしたが、この3銘柄は引き続き同社のポートフォリオで上位を占めている。いずれも規制当局への届け出文書で明らかになった。
デービッド・ボンダーマン氏のワイルドキャット・キャピタル・マネジメントもメタ株を売却し、ポジションは2370万ドル相当になった。マイケル・プラット氏のブルークレスト・キャピタル・マネジメントは、エヌビディアとアマゾンの持ち株を全て売却し、アルファベットの持ち株を減らした。
1億ドル以上を運用するファンドは、各四半期終了から45日以内に保有銘柄の情報開示を義務付けられており、ヘッジファンドやファミリーオフィスなど秘密主義の金融機関が有するポートフォリオを垣間見る機会を提供している。届け出文書には米国内の保有銘柄のみが記載され、デリバティブやショートポジションは除外されている。
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今月死去したジム・シモンズ氏が創業したクオンツヘッジファンド運営会社ルネサンス・テクノロジーズは、ミーム株の熱狂が最近息を吹き返す前に、代表銘柄であるAMCエンターテインメント・ホールディングスとゲームストップを大量に買っていたことが分かった。
バンダ・リサーチのマルコ・イアキーニ氏は「最近のクオンツヘッジファンドはこうした状況への対応がかなり上手になってきた」と今週の顧客リポートで指摘。「例えばリテール投資家のスクイーズ局面に便乗し、その後ポジションを変更してリテール投資家より先に抜け出すようなことをしているだろう」と述べた。
年初に話題のミーム株を取引したヘッジファンドはルネサンスだけではない。バリアズニー・アセット・マネジメントは1-3月にAMCとゲームストップを追加購入した。DEショーはこの2銘柄を売却。シタデル・アドバイザーズはAMCを売却し、ショーンフェルド・ストラテジック・アドバイザーズとエクソダスポイント・キャピタル・マネジメントはゲームストップのポジションを手じまった。
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ロンドンの資産運用会社エブリン・パートナーズのチーフ資産運用オフィサー、エドワード・パーク氏は「財政刺激策によるものであれ、超低金利が長期間続いたことによるものであれ、市場にはまだ大量の資金が流通している」と指摘し、「ゲームストップなどはその兆しだろう」と語った
モルガン・スタンレーのトレーディングデスクが16日に発表したリポートによれば、現在の主な脅威は過度な悲観論よりもむしろ、ヘッジファンドをはじめとする全ての投資家が強気過ぎて、市場が高揚感の重みで崩壊する危険性があることだという。同じ銘柄への集中が進み、投資家のポジショニングは高水準が続き、何か問題が起きれば、その結果はすぐに出る。
クリストファー・メトリ、アマンダ・レベンバーグ両氏らのチームは、「こうした力学が市場の脆弱(ぜいじゃく)性を高めている」とし、「リスクが絡み合っている。ヘッジファンドのロングとS&P500種株価指数の重複が大きいことから、ヘッジファンドのリスク回避が市場全体を下落を引きずり込む可能性がある一方で、マクロのショックはヘッジファンドのポートフォリオを引きずり込む公算が大きい」と分析した。
米国の貯蓄がいかに枯渇しているかという議論が沸き起こる一方で、裕福な投資家などの間では財布のひもは緩みっぱなしだ。バンク・オブ・アメリア(BofA)がまとめたEPFRグローバルのデータによれば、15日までの1週間で120億ドル近くが株式ファンドに流入し、高利回り債重視のファンドは2週連続で資金流入となった。
リスク選好の持続性に絡むセオリーでは、いわゆる「FRBプット」があまりにも長い間、市場に存在し、FRBが市場の救世主として準備万端であるかのように行動すると人々は条件付けられたままのように見える。
ジェフリーズ・ファイナンシャル・グループのモヒト・クマール氏らストラテジストは17日のリポートで「利下げというオプションが残っている限り、FRBプットは俎上(そじょう)に載っており、リスク資産を支え続けるはずだ」との認識を示した。
直近のBofA調査では、FRBが利上げを開始する直前の22年1月以来、最も株式配分が高いことが明らかになった。10人中8人が今年7-12月(下期)に利下げがあり、リセッション(景気後退)はないと予想している。
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米シタデル・セキュリティーズの1-3月(第1四半期)純トレーディング収入は前年同期比68%増の23億ドル(約3560億円)となった。新たな資産クラスや地域への進出に伴い、今年は同社にとって記録的な年になる可能性がある。
資産家のケン・グリフィン氏が創業したシタデル・セキュリティーズは株・債券市場の買い手と売り手をマッチングするマーケットメーク(値付け業務)を行う。アルゴリズムを使いわずかな価格差から利益を得ており、同社の顧客には資産運用会社や銀行、ブローカーディーラー、ヘッジファンド、政府機関、公的年金が並ぶ。
同社はマーケットメークの能力を着実に伸ばしてきた。1-3月期の利益率は54%と、前四半期(42%)および前年同期(40%)を上回った。ブルームバーグの以前の報道によると、競合するジェーン・ストリート・グループの昨年の純トレーディング収入は106億ドル。
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米資産家デービッド・テッパー氏は前四半期に株価が高騰する米ハイテク企業への投資を減らした一方、売り込まれていた中国株を買い増したことが分かった。両市場のバリュエーションに記録的な差がある中、テッパー氏は中国に徐々に関心を高めているヘッジファンド運用者を先導している。
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4月の新築住宅価格は前年同月比では3.51%下落。3月は同2.7%下げていた。4月の中古住宅価格は同6.79%下落した。新築も中古も2011年に現在の方法でデータを収集し始めて以後、記録的な値下がりとなった。
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ゲオルギエワ氏はチューリヒで開催されたイベントで、AIが今後2年間で先進国の雇用の60%、世界の雇用の40%に影響を与える公算が大きいと指摘。「人々や企業が備える時間はほとんど残されていない」とし、「うまく管理できれば生産性は飛躍的に向上する可能性がある。しかし、誤情報の増幅に加え、社会の不平等が拡大する恐れもある」と述べた。
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英資源大手アングロ・アメリカン(Anglo American)は14日、グループ傘下のダイヤモンド産業最大手デビアス(De Beers)の売却計画を発表した。競合する豪BHPの買収提案を退け、より安定した成長が見込める銅や鉄鉱石事業に経営資源を集中するとしている。
長年、世界のダイヤモンド市場を支配してきたデビアスの売却をめぐっては、より安価な人工のラボグロウンダイヤモンド(ラボダイヤ)との価格競争や、中国をはじめとする需要の低迷をアナリストらは指摘している。
デビアスは1888年に英植民地政治家セシル・ローズ(Cecil Rhodes)が設立。採掘から宝飾品販売に至るまで、南アフリカ産ダイヤモンドの取引を長年独占してきた。2011年以降はアングロ・アメリカンが株式の大半を保有している。
米国を拠点とするダイヤモンド業界アナリストのポール・ジムニスキー(Paul Zimnisky)氏は、ダイヤモンド市場の相場は2022年第1四半期の高値から25~30%下落していると指摘。「過去4年間、ダイヤモンドの需要には極めてまれな変動があった」とAFPに語った。
専門家は理由の一つとして、より安価なラボダイヤの台頭が市場の低価格帯を切り崩したことを挙げている。
10年前には世界のダイヤモンド宝飾品市場で1%にも満たなかったラボダイヤのシェアは、現在20%以上になっているとジムニスキー氏は言う。価格が天然ダイヤの10分の1以下になることもあり、その手ごろさが消費者を引き付けるのだ。
もう一つの問題は米国に次ぐ世界第2位のダイヤモンド消費国である中国での需要の落ち込みだ。中国ではコロナ危機後の個人消費がいまだ回復していない。
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クリス・ロコス氏のヘッジファンド会社、ロコス・キャピタル・マネジメントのグローバル市場責任者を務めるリチャード・タン氏は、米連邦準備制度理事会(FRB)が今年利下げをする可能性は低いとの見方を示した。
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