日経:CB Insights:オンライン化どこまで進む 医療ヘルスケアのコロナ後

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オンライン化どこまで進む 医療ヘルスケアのコロナ後 - 日本経済新聞
新型コロナウイルスの感染拡大を受け、ヘルスケア領域では遠隔医療サービスなどが進化した。ウエアラブル端末やデータの活用によって、医療サービスやフィットネス、高齢者介護などで新たな潮流が生まれている。コロナ後も続くと予想されるオンライン化を中心...

独立系の遠隔医療サービス最大手の米テラドック・ヘルス(Teladoc Health)は、全米に外出禁止令が出されてから1週間の診察件数が前週比50%増えたと報告している。21年の業績も順調だ。例えば、21年4~6月期に同社が手がけた遠隔診療は450万件で、前年同期の270万件から大幅に増えた。

CBインサイツの業界アナリスト予想によると、遠隔医療テクノロジーの市場規模は推定646億ドルに上る。

米オービタ(Orbita)は安全なチャットボットサービスを提供している。同社はこのほど、改良版バーチャルアシスタントの運用を開始した。同社の「ソリューションセンター(Solution Center)」はオムニチャネル技術(複数の音声・動画チャットプラットフォームやチャットボット技術)を使い、在宅検査の運営や軽い病気の診断、保険金の請求を担う。

米アフィニティ・エンパワーリング(Affinity Empowering)は在宅での診断検査サービス「eHome」や治療サービス「eCare」で在宅診断の分野にさらに深く食い込んでいる。同社のサービスは患者の既存の治療プランと統合し、専門家が一定の病気を治療したり、医療専門家によって治療プランが変更された場合に患者に最新情報を提供したりできる。

米アマゾン・ドット・コム、グーグル、マイクロソフトは新型コロナの研究を支援するコンソーシアム「COVID-19 ハイパフォーマンス・コンピューティング(HPC)」にも参加し、生物情報学や疫学、分子生物学の研究者に処理能力を供与している。このコンソーシアムは世界各国の研究者に600ペタ(ペタは1000兆)フロップス(1秒当たりの浮動小数点演算回数)の処理能力、5万個以上の画像処理半導体(GPU)、数百万個のチップや記憶装置を提供している。

米ライフシグナルズ(LifeSignals)は新型コロナ患者のモニタリングに使う使い捨ての無線バイオセンサーパッチの開発を最優先で進める方針を明らかにした。一方、米スプライヘルス(Spry Health)は、FDAの認可を受けたウエアラブル端末「ループ(Loop)」を使う臨床医主導のモニタリングサービスに乗り出すと発表した。ループは装着者の心拍数や血液中の酸素飽和度、呼吸数を追跡する。

コロナ前からオンラインセラピーを手がけていたインドのワイサ(Wysa)、米トークスペース(Talkspace)、米エイブル・トゥー(AbleTo)などのアプリの需要は急増した。例えば、具体的なニーズと目標に基づいて利用者とセラピストをマッチングするサブスクリプション(定額課金)型サービス、トークスペースの20年4月の利用者数は前月比65%増えた。同社は21年3月末時点のアクティブユーザー数は1年前に比べて110%増えたと報告している。

一方、セラピーを無料や割安な価格で提供するヘルスケアのスタートアップも相次いだ。例えば、米ヒムズ・アンド・ハーズ(Hims & Hers)はコロナ禍のストレスへの対処を支援するため、匿名で参加できる集団セラピーを無料で実施している。料金はいずれ1回15ドルになる。

市場規模966億ドルのフィットネス業界も新型コロナの感染拡大に伴う混乱に見舞われている。

米ペロトン(Peloton)に代表されるオンライントレーニングの人気は高まっているが、コロナ前には特化型の小規模ジムが急成長期にあり、ブルームバーグによると13~17年に会員数は120%以上増えていた。成長は19年末にはすでに鈍化しつつあったが、パンデミックを受けて完全に失速した。

米国だけで35万人を超えるフィットネスインストラクターやトレーナーがオンラインクラスへの移行を迫られた。多くは「ズーム」や「インスタグラム」のライブ配信機能、「フェイスタイム」「ユーチューブ」など、オンラインフィットネス向けに開発されたわけではない既存の動画配信アプリを使って対応している。米調査会社クラブインテルによると、オンデマンドやライブ配信のトレーニングを提供し始めたフィットネスクラブのオーナーは72%と19年の25%から増えた。

サブスク型のジム、米クラスパス(ClassPass)のビジネスモデルは実店舗のジムに大きく依存しているが、インストラクターの移行を支援するためにウェブサイトで映像プラットフォームの運営を始めた。音声フィットネス大手の米アープティブ(Aaptiv)は実店舗のフィットネスを手がける米エクスポネンシャル・フィットネス(Xponential Fitness)と提携し、エクスポネンシャルの会員にコンテンツを提供すると発表した。

一方、すでにオンラインファーストだったブランドにはコロナ禍で利用者が大幅に増えている。双方向型の在宅フィットネス、米ミラー(Mirror)は米国で初めて新型コロナの感染者が確認されてからの数週間で、利用者が2倍に増えた。同社はカナダのアパレル大手ルルレモンに5億ドルで買収された。米トレーニング配信プラットフォーム、ニオユー(NEOU)の1日あたりの新規契約者数は1週間で平均600%増えた。

高齢者に支援を提供するマーケットプレイスの米アンブレラ(Umbrella)は、60歳以上の高齢者に非接触で必需品を配達するサービスを扱う方針を明らかにした。遠隔医療の米バイタルケア(VitalCare)は新型コロナ危機を受け、高齢者住宅や長期介護施設に自社プラットフォームを90日間無料で提供した。

グーグルも老人ホームの入居者向けにインターフェースを簡略化したスマートディスプレー「ネストハブ・マックス(Nest Hub Max)」をリリースし、この分野に参入している。このデバイスではビデオ通話の連絡先をあらかじめインストールでき、入居者が友人や家族とつながるのを支える。高齢者はよくある質問への答えをすぐに見つけたり、天気予報やアラームの設定、音楽を流すなどの便利な機能を有効にしたりできる。

コロナ禍で高齢者コミュニティーにテクノロジーを適用する価値が証明されたため、デジタルインフラは在宅と介護施設の両方で高齢者介護に欠かせない存在になるだろう。

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