概要
このブログでは、オルタナティブ資産に資産をアロケートする手段として投機を推奨しているが、必ずしも投機を行う必要はない。
ヘッジファンド型ETFを活用する方法はその一つだが、日本からの投資となると、まだ敷居が高いかもしれない。
オルタナティブ資産は、ポートフォリオアロケーションの観点からも重要だし、テーマ投資の観点からも重要である。アクリフォーカスファンドへのインタビューでも、
政府系投資ファンド(SWF)、大手公的年金、機関投資家が膨大な資金を株式や債券からプライベート・エクイティ、不動産、インフラ、プライベートクレジットなどのオルタナティブ資産にシフトさせるトレンド・・・2000年に多くの大手機関投資家はオルタナティブ資産への資産配分比率目標を5%としたが現在は約25%になった。目標が50%を超える可能性もある。その場合、最大25兆ドルの資金が今後10年ほどで他資産からオルタナティブ資産にシフトする。
とされており、注目度は高い。オルタナティブ投資から恩恵を受ける手段の一つは、オルタナティブ資産運用会社に投資することである。本稿では、KKR & Co. Inc. (KKR)、Brookfield Asset Management Inc. (BAM)、The Blackstone Group Inc. (BX)の投資評価を行う。
KKR & Co. Inc.は、直接投資とファンド・オブ・ファンズ投資を専門とするプライベート・エクイティおよび不動産投資会社です。買収、レバレッジド・バイアウト、マネジメント・バイアウト、クレジット・スペシャル・シチュエーション、グロース・エクイティ、マチュア、メザニン、ディストレスト、ターンアラウンド、ローワー・ミドル・マーケット、ミドル・マーケットへの投資を専門としています。
ブルックフィールド・アセット・マネジメントは、世界有数のオルタナティブ資産運用会社であり、実物資産に対する最大級の投資家でもあります。当社の投資対象は、不動産、再生可能エネルギー、インフラ、プライベート・エクイティ資産です。
The Blackstone Group Inc. は、不動産、プライベート・エクイティ、ヘッジファンド・ソリューション、クレジット、セカンダリー・ファンド・オブ・ファンズ、公的債務およびエクイティ、マルチ・アセット・クラス戦略を専門とするオルタナティブ・アセット・マネジメント企業です。
モメンタム指標
モメンタム指標としては期間リターンを使うことが多いです。ルックバック期間としては3年までの数値がよく用いられます。
1 month | 3 month | 6 month | 1 year | 3 year | 5 year |
6.27 | 12.30 | 50.18 | 79.64 | 135.77 | 349.36 |
1 month | 3 month | 6 month | 1 year | 3 year | 5 year |
5.40 | 19.53 | 37.61 | 68.52 | 94.58 | 143.00 |
1 month | 3 month | 6 month | 1 year | 3 year | 5 year |
17.96 | 30.17 | 62.26 | 116.20 | 229.02 | 343.89 |
ベータ、アルファ、シャープレシオ
ベータは、市場ポートフォリオの収益率に対する証券の収益率の限界的な寄与度を示すもので、たとえばポートフォリオのベータは、$$\beta_i=\frac{\sigma_{iM}}{\sigma_M^2}$$で定義されます。定義から明らかなように、ベータは「証券の収益率」の「市場ポートフォリオ収益率」の変化に対する感応度を示します。したがって、ベータが大きい証券はよりボラティリティが高く、小さい証券はボラティリティが低いことを意味します。
すべての投資家が直面しているリスクとリターンとのトレードオフを示す直線を資本市場線(Capital Market Line, CML)といいます。CMLは無リスク金利を切片とし、市場ポートフォリオのリスク・リターンを通る直線です。同一リスクにおける証券の平均収益率とCMLの差はアルファと呼ばれ、超過リターンの指標として用いられるとともに、誤った価格付けの証券を探索する指標としても用いられます。
証券のシャープレシオは$$S_i=\frac{R_i-R_f}{\sigma_i}$$
で定義される指標で、\(R_f\)は無リスク金利。証券の収益率の標準偏差をリスク尺度とするときの証券のリスクプレミアム(超過収益性)を示します。
2 year | 3 year | 5 year | |
Beta | 1.31 | 1.32 | 1.26 |
Alpha | 21.47 | 13.17 | 11.67 |
Sharpe ratio | 0.16 | 0.11 | 0.28 |
2 year | 3 year | 5 year | |
Beta | 1.26 | 1.20 | 1.17 |
Alpha | -0.02 | 5.43 | 2.17 |
Sharpe ratio | 0.05 | 0.07 | 0.09 |
2 year | 3 year | 5 year | |
Beta | 1.20 | 1.20 | 1.23 |
Alpha | 21.80 | 24.15 | 12.07 |
Sharpe ratio | 0.16 | 0.17 | 0.27 |
PER
PERとはPrice Earnings Ratioの略で、企業の直近の株価の1株当たり純利益(EPS:Earnings Per Share)に対する比率。EPSは直近12ヶ月(LTM)の純利益に対応する。フォワードPER(FPER)は今後12ヶ月(NTM)のフォワードEPSに対応する。PERの数値が低ければ、株価は割安と判断される。
PERは19, 19, 28倍、想定レンジは10-20, 10-30, 20-30倍です。
PCFR
PCFRとはPrice Cash Flow Ratioの略で、株価キャッシュフロー倍率のこと。キャッシュフローは直近12ヶ月(LTM)の営業キャッシュフロー(営業CF:税金等調整前当期純利益(以下、税引き前利益)に減価償却費を加算したもの)に対応する。フォワードPCFR(FPCFR)は今後12ヶ月(NTM)の営業CFに対応する。PCFRの数値が低ければ、株価は割安と判断される。
PCFRは20倍, 27倍, 26倍、 想定レンジはxx-xx、5-15、5-20倍です。
PBR
PBRとはPrice Book-value Ratioの略で、企業の直近の株価の1株当たり純資産(BPS:Book-value Per Share)に対する比率。1株あたりBPSは直近の発行済株式数に対応する。PBRの数値が低ければ、株価は割安と判断され、1倍が底値の目安とされる。
PBRは2.3, 2.5, 13.3倍、想定レンジはxx-xx, xx-xx, xx-xx倍です。
PSR
PSRとはPrice Sales Ratioの略で、株価売上倍率のこと。売上高は直近12ヶ月(LTM)の売上高合計に対応する。銀行の場合、受取利息にその他経常利益を合計したものを用いる。フォワードPSR(FPSR)は今後12ヶ月(NTM)の売上高合計に対応する。PSRの数値が低ければ、株価は割安と判断される。
PSRは9.4, 2.3, 14.5倍、想定レンジは5-10, 0.5-2.0, 5-15倍です。
EV/EBITDA倍率
EV/EBITDA倍率とはEV(Enterprise Value:事業価値)がEBITDAの何倍になっているかを測る財務比率のこと。EBITDAは直近12ヶ月(LTM)の支払利息、法人税、減価償却費および減耗費前利益に対応する。事業価値は時価総額、総負債、優先株式、少数株主持分の合計から現金と短期投資を差し引いて算出。銀行の場合、現金と短期投資の代わりに預け金を用いる。フォワードEV/EBITDA倍率(FEV/EBITDA倍率)は今後12ヶ月(NTM)のEBITDAに対応する。EV/EBITDA倍率は事業価値をEBITDA何年分で賄えるかを表しており、簡易買収倍率とも呼ばれる。
EV/EBITDA倍率は29, 25, 26倍、想定レンジはxx-xx, xx-xx, xx-xx倍です。
EBITDA有利子負債倍率
EBITDA有利子負債倍率は、有利子負債をEBITDAで割った健全性の指標。総負債(TD)は直近会計期間の短期および長期負債を含み、純負債(ND)は直近会計期間のTDから現金および短期投資を差し引いた値。
FNDは6.6, 10.8, 0.5倍、FTDは9.2, 11.6, 1.0倍です。
ROE、ROA、ROIC、WACC
ROEとはReturn On Equityの略で、自己資本利益率:ROE=EPS/BPS×100で計算される経営効率の指標で、数値が高いほど効率性が高いとされる。ROAとはReturn On Assetの略で、総資産利益率のこと。ROICとはReturn On Invested Capitalの略で、投下資本利益率のことでもっとも信頼性の高い経営効率の指標とされている。それぞれのフォワード値にはアナリストの予想平均値を用いている。WACCとはWeighted Average Cost of Capitalの略で、借入と株式調達にかかるコストの加重平均値。ROIC-WACCは、調達コストを考慮した投下資本利益率で正の値が望ましい。
ROEは12.4, 0.8, 43.6%、ROAは2.1, 1.7, 59.9%、FROICはxx, xx, xx%、WACCは5.3, 3.2, 8.2%、ROIC-WACCはxx, xx, xx%。
株主情報
Holdings: KKR
- Vanguard, 8%
- ValueAct Capital, 5%
- Capital International, 4%
Long: Capital, Norges
Short: ValueAct, Jackson Square, Invesco
Holdings: BAM
- Partners Value, 8%
- Brookfield Public, 8%
- Flatt Bruce, 4%
Long: Fidelity, Mackenzie, Capital
Short: GWL, Wellington
Holdings: BX
- Vanguard, 6%
- Wellington, 5%
- Morgan Stanley Smith Barney, 3%
Long: JP Morgan Asset, GQG Partners
Short: Wellington, Janus Henderson
投資判断
- オルタナティブ資産の代わりとして、オルタナティブ投資ファンドの株式をポートフォリオに組み入れるのは有効な戦略だが、足元ではどの銘柄のバリエーションも適正~割高。
- BAMは利益水準が低く、とくに割高感がある。
- 当面は、直接オルタナティブ資産に投資したほうがよいと思うが、急落局面で仕込む銘柄としては面白いかもしれない。
免責事項
記事は、一般的な情報提供のみを目的としてのみ作成したものであり、投資家に対する有価証券の売買の推奨や勧誘を目的としたものではありません。また、記事は信頼できると判断した資料およびデータ等により作成しておりますが、その正確性および完全性について保証するものではありません。また、将来の投資成果や市場環境も保証されません。最終的な投資決定は、投資家ご自身の判断でなされますようお願いします。