概要
合成生物学(Synthetic Biology)は、組織、細胞、遺伝子といった生物の構成要素を部品と見なし、それらを組み合わせて生命機能を人工的に設計したり、人工の生物システムを構築したりする学問分野のこと。従来の分子生物学では、生物を個体から組織、細胞、分子、遺伝子へと細分化し、その機能を理解しようという解析的なアプローチが取られてきた。それに対し合成生物学では、分子生物学などで蓄積された知見を生かしながら遺伝子を設計し、目的物質を生産するための代謝経路を構築し、それが機能する細胞や生物システムを作り出すという、構成的なアプローチを取る。
噛み砕いて説明すれば、遺伝子工学が行っていたような漸進的な進歩を目指すのではなく、生物の遺伝子プログラムを根本から再構成しようという極めて意欲的な試みを合成生物学が行っているということである。技術的なハードルは高いものの、人間が実験室で行っていた化学実験よりもはるかに効率的であり、応用可能性も広い。遺伝子組み換えと合成生物学を組み合わせれば、特定の目的を満たすための品種改良は言うまでもなく、再設計された動植物や微生物を組み合わせることで未知の燃料や物質を生産できる可能性もあり、地球温暖化への特効薬としての役割も期待されている。
本稿では、合成生物学を事業の中心に据えるAmyris, Inc. (AMRS), Zymergen Inc. (ZY)の投資評価を行う。
Amyris, Inc.は、合成バイオテクノロジー企業で、ヨーロッパ、米国、アジア、ブラジルなど世界各国で、消費者向けブランドを通じて、また持続可能な天然成分のサプライヤーとして、ヘルスクリーンと美容製品市場で事業を展開している。石油化学製品や動植物から造られている製品を、エコフレンドリーな方法で代替することが期待されており、遺伝子組み換え酵母とサトウキビを使って、サメの肝臓から造られていたスクワラン(高級保湿剤)、バニラの香料であるバニリン、植物から造られるカロリーゼロ甘味料などを生産している。
Zymergen Inc.は、米国、アジア、ヨーロッパにおいて、産業用の微生物の設計、エンジニアリング、最適化を行っています。同社は、機械学習を用いてゲノムを探索空間として扱い、化学・材料、農業、医薬品などの様々な産業向けに有用な遺伝子の変化を特定するプラットフォームを持っている。
モメンタム指標
モメンタム指標としては期間リターンを使うことが多いです。ルックバック期間としては3年までの数値がよく用いられます。
1 month | 3 month | 6 month | 1 year | 3 year | 5 year |
-14.86 | -2.82 | 17.33 | 188.78 | 105.97 | 148.25 |
1 month | 3 month |
-79.88 | -81.76 |
ベータ、アルファ、シャープレシオ
ベータは、市場ポートフォリオの収益率に対する証券の収益率の限界的な寄与度を示すもので、たとえばポートフォリオのベータは、$$\beta_i=\frac{\sigma_{iM}}{\sigma_M^2}$$で定義されます。定義から明らかなように、ベータは「証券の収益率」の「市場ポートフォリオ収益率」の変化に対する感応度を示します。したがって、ベータが大きい証券はよりボラティリティが高く、小さい証券はボラティリティが低いことを意味します。
すべての投資家が直面しているリスクとリターンとのトレードオフを示す直線を資本市場線(Capital Market Line, CML)といいます。CMLは無リスク金利を切片とし、市場ポートフォリオのリスク・リターンを通る直線です。同一リスクにおける証券の平均収益率とCMLの差はアルファと呼ばれ、超過リターンの指標として用いられるとともに、誤った価格付けの証券を探索する指標としても用いられます。
証券のシャープレシオは$$S_i=\frac{R_i-R_f}{\sigma_i}$$
で定義される指標で、\(R_f\)は無リスク金利。証券の収益率の標準偏差をリスク尺度とするときの証券のリスクプレミアム(超過収益性)を示します。
2 year | 3 year | 5 year | |
Beta | 0.91 | 1.12 | 1.11 |
Alpha | 103.20 | 67.38 | 56.21 |
Sharpe ratio | 0.14 | 0.08 | 0.15 |
Beta |
Alpha |
Sharpe ratio |
PER
PERとはPrice Earnings Ratioの略で、企業の直近の株価の1株当たり純利益(EPS:Earnings Per Share)に対する比率。EPSは直近12ヶ月(LTM)の純利益に対応する。フォワードPER(FPER)は今後12ヶ月(NTM)のフォワードEPSに対応する。PERの数値が低ければ、株価は割安と判断される。
PER | 想定レンジ | |
AMRS | — | — |
ZY | — | — |
PCFR
PCFRとはPrice Cash Flow Ratioの略で、株価キャッシュフロー倍率のこと。キャッシュフローは直近12ヶ月(LTM)の営業キャッシュフロー(営業CF:税金等調整前当期純利益(以下、税引き前利益)に減価償却費を加算したもの)に対応する。フォワードPCFR(FPCFR)は今後12ヶ月(NTM)の営業CFに対応する。PCFRの数値が低ければ、株価は割安と判断される。
PCFR | 想定レンジ | |
AMRS | — | — |
ZY | — | — |
PBR
PBRとはPrice Book-value Ratioの略で、企業の直近の株価の1株当たり純資産(BPS:Book-value Per Share)に対する比率。1株あたりBPSは直近の発行済株式数に対応する。PBRの数値が低ければ、株価は割安と判断され、1倍が底値の目安とされる。
PBR | 想定レンジ | |
AMRS | -41.5 | — |
ZY | 2.0 | — |
PSR
PSRとはPrice Sales Ratioの略で、株価売上倍率のこと。売上高は直近12ヶ月(LTM)の売上高合計に対応する。銀行の場合、受取利息にその他経常利益を合計したものを用いる。フォワードPSR(FPSR)は今後12ヶ月(NTM)の売上高合計に対応する。PSRの数値が低ければ、株価は割安と判断される。
PSR | 想定レンジ | |
AMRS | 10.3 | 5-35 |
ZY | 9.0 | 1-50 |
EV/EBITDA倍率
EV/EBITDA倍率とはEV(Enterprise Value:事業価値)がEBITDAの何倍になっているかを測る財務比率のこと。EBITDAは直近12ヶ月(LTM)の支払利息、法人税、減価償却費および減耗費前利益に対応する。事業価値は時価総額、総負債、優先株式、少数株主持分の合計から現金と短期投資を差し引いて算出。銀行の場合、現金と短期投資の代わりに預け金を用いる。フォワードEV/EBITDA倍率(FEV/EBITDA倍率)は今後12ヶ月(NTM)のEBITDAに対応する。EV/EBITDA倍率は事業価値をEBITDA何年分で賄えるかを表しており、簡易買収倍率とも呼ばれる。
EV/EBITDA | 想定レンジ | |
AMRS | 216.1 | — |
ZY | — | — |
EBITDA有利子負債倍率
EBITDA有利子負債倍率は、有利子負債をEBITDAで割った健全性の指標。総負債(TD)は直近会計期間の短期および長期負債を含み、純負債(ND)は直近会計期間のTDから現金および短期投資を差し引いた値。
EBITDA純負債 | EBITDA総負債 | |
AMRS | 16.7 | 23.6 |
ZY | — | — |
ROE、ROA、ROIC、WACC
ROEとはReturn On Equityの略で、自己資本利益率:ROE=EPS/BPS×100で計算される経営効率の指標で、数値が高いほど効率性が高いとされる。ROAとはReturn On Assetの略で、総資産利益率のこと。ROICとはReturn On Invested Capitalの略で、投下資本利益率のことでもっとも信頼性の高い経営効率の指標とされている。それぞれのフォワード値にはアナリストの予想平均値を用いている。WACCとはWeighted Average Cost of Capitalの略で、借入と株式調達にかかるコストの加重平均値。ROIC-WACCは、調達コストを考慮した投下資本利益率で正の値が望ましい。
ROE | ROA | ROIC | WACC | |
AMRS | 26.0 | — | — | 6.3 |
ZY | -152.8 | -131.1 | — | — |
株主情報
Holdings: AMRS
- Foris, 29%
- Koninklijke DSM NV, 6%
- Fidelity, 6%
Long: Schottenfeld; Vanguard; Lord, Abbett & Co.; BlackRock
Short: Farallon, Perceptive
Holdings: ZY
- GIC, 5%
- Baillie Gifford, 3%
- Hoffman Joshua, 3%
- Dean Erik Jedidiah, 3%
- Serber Zachariah, 3%
Long: GIC, Hoffman, Dean, Baron Capital
Short: ARK, BlackRock
投資判断
- 合成生物学はバイオテックの最前線で、長期的に有望なテーマ
免責事項
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