機関投資家動向
株式
今週の米連邦公開市場委員会(FOMC)を経てS&P500種株価指数は過去最高値を更新したが、FOMCを前にした1週間に米国株からは巨額の資金が流出していた。
S&P500は年初来で最高値を20回更新しており、ソシエテ・ジェネラルのマニシュ・カブラ氏ら市場担当ストラテジストは、企業の利益見通しが堅調なことからまだ上値余地があるとみている。
一方、BofAのストラテジスト、マイケル・ハートネット氏は米国株の上昇について、バブルの兆候だと警告。同氏は昨年、S&P500が大幅高となる中でも株式への弱気を維持していた。
その一つは、メガキャップのハイテク企業のバリュエーションが拡大し続けた場合、年末までにS&P500種株価指数が6000に達し、予想株価収益率が23倍に達するというものだ。
「人工知能(AI)を巡る楽観は高いように見えるが、長期的な成長期待と最大手のハイテク、メディア、通信(TMT)銘柄のバリュエーションは、まだ『バブル』の領域には程遠い」とストラテジストは分析した。
サウジアラビアの政府系ファンド、パブリック・インベストメント・ファンド(PIF)は人工知能(AI)投資を目的とした最大400億ドル(約6兆円)規模のファンド設立に向けて、ベンチャーキャピタル大手アンドリーセン・ホロウィッツと提携の可能性について初期の交渉を行っている。内情を知る複数の関係者が明らかにした。
アジア地域のクオンツヘッジファンドの先駆けだった「マッコーリー・アジアン・アルファ・ファンド」を5年前に閉鎖したベテラン・ファンドマネジャーのニック・バード氏が戻ってきた。
同ファンドの運用資産はピーク時に20億ドル(約3000億円)に上ったが、バード氏の新しいファンドはより賢く、そして意図的にかなり小さい規模になるという。
バード氏は現在、OQファンズ・マネジメントを率いている。2020年6月に香港で、1500万ドルの自己資金でスタートした同社は現在、運用資産額が5億ドル程度にまで拡大しているが、マッコーリーで期待外れのリターンをもたらし、最終的にファンド閉鎖に至ったような行き過ぎた拡大は避ける決意だ。
今注目している投資手法の一つは、本土と香港の取引所に上場している中国株の価格差を利用するもので、最近では過去15年間で最も差が拡大しており、中国のテクノロジー株のバリュエーションが「不当に安い」とみてもいるという。
バード氏の強みとして広く評価されているのが、いわゆる「裁量オーバーレイ」の手法で、コンピューターモデルを用いて銘柄を選別する一方、自らの判断で個別銘柄やファクターの選定やウエート付けを行う。
地政学的緊張とデフレを警戒する海外投資家が香港上場株を投げ売りしたことで、二重上場企業の本土人民元建て株との格差が拡大している。バード氏は、中国人寿保険のような流動性の高い大型中国株は、中国国内よりも香港の方が70%も割安であり、同じ議決権と配当であることを考えると異常だと指摘。元建て株やFTSE中国A50株価指数先物のショートポジションと組み合わせて、こうした香港株の一部にロング・ポジションをとっている。
また、余剰資金で自社株買いを強化しているアリババグループや百度、テンセント・ホールディングス(騰訊)、JDドットコム(京東)でロングポジションを持っていると付け加えた。
スティーブ・コーエン氏のヘッジファンド運営会社ポイント72アセット・マネジメントは、新たに5人のマクロポートフォリオマネジャーを追加する。すでに社内投資チームの約4分の1を占める部門を一段と強化する。
さらに、来年にはシタデル出身のタイラー・ストファーズ、ジョージ・アルゼノ両氏が加わる予定。ストファーズ氏は金利に注力し、アルゼノ氏は金利・外為取引を担当する。
外国人投資家は、AIが今年最大の成長のけん引役になるというTSMCの主張を支持し、株式の保有率を2年ぶりの高水準に押し上げた。ピクテ・アセット・マネジメントによると、同社はAIに使用される先端半導体の製造で90%以上のシェアを占めている。
著名投資家ウォーレン・バフェット氏は昨年、TSMCの立地から地政学的懸念を理由に50億ドル(約7500億円)相当の同社株を売却した。台湾は米国寄りの頼清徳氏を総統を選出し、中国との対立の懸念が深まっている。
UBSオコナー・グローバル・マルチストラテジー・アルファの共同最高投資責任者(CIO)、バーナード・アーコン氏は、「地政学はこのセクターにとって歴史的にリスクとして認識されてきたが、これらの製品の戦略的性質と現地サプライチェーンの構築への意欲は、ほぼ間違いなく地政学がこの分野にとって追い風になっていることを意味する」と分析。「われわれはまだ、半導体のアップサイクルの初期段階にいる」と話した。
オールスプリング・イントリンシック・エマージング・マーケット・エクイティーのポートフォリオ・マネジャー、ゲイリー・タン氏は、「地政学的な懸念はあるものの、TSMCは、新興市場にはこの分野で匹敵する質の企業がないことから、AIと半導体におけるより広範な回復に賭けるための基本的な銘柄だ」と述べた。
債券
為替
数日前には日本銀行が、マイナス金利政策を解除する一方で金融情勢は当面、緩和的な状態が続くことを示唆した。日銀の決定後、円は対ドルで1990年以来の安値付近に下落した。一方、米金融当局はなお今年3回の利下げを視野に入れている。
ストラテジストは「穏やかなマクロリスク環境は徐々に円の重荷になるだろう」と指摘。「インフレ鈍化に伴う慎重な米利下げが円を押し上げるとも考えていない」とし、どちらかといえば利下げが調整されるとの期待は、「安全資産としての円の魅力を高めることが多いリセッション(景気後退)リスクの確率を低下させている」と分析した。
CFTCによると、ヘッジファンドは21年以来一貫して円ショートを維持しており、日銀が政策を正常化しつつも緩和的な姿勢を維持するとの期待から、円ショート取引はここ数カ月も人気が高い。
予想されていた日銀の利上げは結局、米国と日本の利回り格差を縮小させることはほとんどなかった。円は引き続きキャリートレードの調達通貨となっている。
CIBCの外国為替ストラテジー世界責任者、ビパン・ライ氏(トロント在勤)は日銀発表後のリポートで「日銀のシフトはハト派的な表現に彩られており、資金が大量に本国へ送金される可能性は低い」と分析。「中長期的には、円は依然としてキャリートレードの重要な調達通貨であり続けるだろう」と予想した。
不動産
オリックス傘下の不動産運用会社は、運用先として米商業用不動産の組み入れを検討する。信用力が低下した「ディストレスト物件」に対する知見を生かし、海外不動産の運用事業への参入を図る。日本の不動産運用会社による海外市場への進出例はまだ少ないという。
オリックス不動産投資顧問の北村達也社長がブルームバーグの取材で明らかにした。顧客ニーズのある物件を組み込んだ私募ファンドを組成し、運営を受託している。不動産物件の運用には土地勘が必要なこともあり、これまでの運用対象は国内のみ。現在の預かり資産残高(AUM)約9000億円を、海外市場への参入もテコに1年後には1兆円に増やしたい考えだ。
米商業用不動産市場は、金利上昇に加え、新型コロナウイルス禍が一段落した後も従業員のオフィス回帰が進まず、空室率の高止まりに見舞われている。資産価値の下落により米地方銀行やあおぞら銀行などが引当金の積み増しを迫られた。金融機関による商業用不動産へのエクスポージャーを巡る懸念が高まる中での参入検討となる。
米国では22年半ばからオフィス向け商業用不動産担保証券(CMBS)ローンの30日延滞率が主要都市で顕著に上昇している。一方、ここにきて悲観一辺倒ではなくなりつつもある。米投資会社ブラックストーンのジョン・グレイ社長は今月14日、不動産価格が底打ちしたと述べ、値崩れした資産を素早く買い上げるべき好機が訪れているとの認識を示した。
20日の資料によれば、「クレディ・スイス・リアル・エステート・ファンド・インターナショナル」は2023年の投資リターンがマイナス22%だった。保有不動産の時価総額は31%減り25億2000万スイス・フラン(約4300億円)になったという。
空売り投資家のカーソン・ブロック氏は、米投資会社ブラックストーンの不動産投資信託(REIT)「ブラックストーン・モーゲージ・トラスト」に対して「一段と弱気」になっていると明らかにした。集合住宅不動産の厳しい環境を理由に挙げている。
不動産価格の下落と高い借り入れコストにより、商業用不動産の所有者は圧迫されている。ブロック氏は昨年12月、ブラックストーン・モーゲージ・トラストをショートにしていると説明。商業用不動産に打撃を与える最悪の経済情勢にさらされ、流動性危機に直面している可能性があると指摘していた。
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