機関投資家動向
ヘッジファンド運営会社ブリッジウォーター・アソシエーツの共同最高投資責任者(CIO)、カレン・カーニオルタンブール氏は米連邦準備制度の利下げが多くの市場参加者が予想するよりも遅くなるかもしれないとの見方を明らかにした。
BofAによれば資産運用会社のロングポジションは、米国債ファンドへの継続的な資金流入と最近の利回り上昇局面での買いを反映している。このような押し目買いは、ショートポジションを解消するための買いと共に、米求人件数が予想以上に減少したことに反応した29日の米国債上昇に拍車をかけた可能性がある。
少し前まで投資家らはタイガー・マネジメント創業者の故ジュリアン・ロバートソン氏の弟子たちが手がけるヘッジファンド、いわゆる「タイガー・カブ」に投資したくてたまらなかった。しかし、過去最悪のリターンを記録したことで、資金流入は「すずめの涙」と言えるペースに減速した。
「投資家はたいがいのタイガー・カブにいやほど失望している」とBCAリサーチのプライベートマーケット&オルタナティブ部門のチーフストラテジストでイリノイ州教職員退職年金制度の元インベストメントオフィサーであるブライアン・ペイン氏は指摘。
「これらのファンドの昨年のパフォーマンスを考えれば、このような資金流入の減少は驚くに当たらない。機関投資家は今、ハイテク株へのハイベータを持つ株式ロング・ショート運用者から得られる分散投資効果を疑問視している」のだという。
約20億ドルをヘッジファンドに投資するモルガン・クリーク・キャピタル・マネジメントの創業者マーク・ユスコ氏は「ヘッジファンドへのセンチメントはかなり劇的に悪化しており、それがフローに影響を及ぼしているのは確かだ。運用会社のこの大きなグループは、同じDNAを持ち、保有資産や投資スタイルが重複しているが、私がこれまで見た中で最も不人気なようだ」と話した。
労働市場軟化の兆候は、米金融当局が利上げを停止することを「強く示唆」するものであり、予想される1日の雇用統計の「穏やかな」数値は、「ゴルディロックスのジグソーパズルの最後のピース」となるだろうと、マイケル・ハートネット氏が述べた。しかしながら、今月以降にいわゆるハードランディングの兆候が強まると同氏は予想している。
「最後の利上げで売れ」とハートネット氏は8月31日付のリポートで呼び掛けた。昨年の米国株の低迷を正しく予測した同氏は、S&P500種株価指数が2023年に17%上昇した後も弱気姿勢を崩していない。
ヘッジファンド運営会社シタデルの元運用者、ナイル・オキーフとティオ・シャルバギの両氏が創設したヘッジファンドが大きな損失を被った。同ファンドは2021年に欧州で新設されたヘッジファンドとしては運用資産で最大規模となっていた。
両氏の株式ロングショート戦略のヘッジファンド、フィフスデルタの7月の運用成績はマイナス約13%。年初来の損失は25%となった。一時は29%に膨らんでいた。事情に詳しい複数の関係者が情報の部外秘を理由に匿名を条件に明らかにした。
シタデルはメタ・プラットフォームズや中国の字節跳動(バイトダンス)、アルファベットなどの大手テクノロジー企業およびオプティバー・ホールディングやジェーン・ストリート・キャピタル、サスケハナ・インターナショナルなどのマーケットメーカーと人材を巡り競争している。
米国の金融業界のインターン報酬の中央値は、ユーザーが報告する報酬データを分析するレベルズ・ドット・fyiが調査したトップ16社で19%上昇。ヘッジファンドと自己勘定取引会社では時給が前年比29%増の111ドルとなった。シタデルの報酬はトップクラスだ。ヘッジファンドや銀行は、人工知能(AI)や定量分析のスキルが重宝される医学研究などの分野とも人材を奪い合っている。
クオンツヘッジファンド運用大手のツーシグマ・インベストメンツは、オンショア中国ファンドが7月に月間ベースで過去最高の成績を上げた。商品相場上昇が運用成績を押し上げた。同種ファンドの年初来リターンランキングで首位に近づいたことを受け、同社は追加資金の調達に動いた。
景気減速や不動産債務問題への懸念を背景に中国市場が不安定な時期にこのパフォーマンスは際立っている。深圳市排排網投資管理がまとめたデータによると、ツーシグマはいわゆるCTA(商品取引顧問)戦略のもとで少なくとも50億元(約1000億円)を現地で運用しているヘッジファンドの中で、トップ3に入る成績を上げている。
2008年の金融危機を的確に予測したエコノミスト、ヌリエル・ルービニ氏は、経済が予想に反し下振れした場合、世界の株価は今年後半に最大10%下落し得るとの見方を示した。
金利が間もなくピークに達するとの期待や、世界経済が予想以上に持ちこたえるとの楽観的な見方から今年前半に上昇した株式市場にとっては、突然の反転となる。米国では特に人工知能(AI)に関する熱狂を原動力にハイテク株が株高をけん引してきた。
「世界経済がハードランディングする深刻なリスクがあった6カ月前と比べると、今はそのリスクは減少している。これは良いニュースだ。しかし、世界経済がソフトランディングを達成できるかどうかについては、まだ議論の余地があると思う」と同氏は語った。
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