本稿では、投機のノウハウを具体的に得るため、純資産の大きいヘッジファンド型ETFの戦略を紹介していこう。
DBEF
Xtrackers MSCI EAFE Hedged Equity ETFは、北米を除く先進国株式(為替ヘッジあり)へ投資を行う。EFA(iShares MSCI EAFE ETF)と同じくMSCI EAFEインデックスへのエクスポージャーを提供するファンドだが、1ヶ月物の先渡契約、NDF(Non-Deliverable Forward)契約を利用した為替ヘッジによって異なるリスクリターンを提供している。ヘッジファンドというよりはインデックスファンド。25%程度が日本株なので、日本の投資家が買う意味はない。北米投資家向け。上位組入銘柄はNestle, ASML, Roche, LVMH, Novartis, Toyota, Unilever, AstraZenecaなど。
RPAR
RPAR Risk Parity ETFはAdvanced Research Risk Parity Index (RPARTR)へのエクスポージャーを提供するファンドで、米国物価連動国債(TIPS:Treasury Inflation-Protected Securities)、米国債、グローバル株式、コモディティに分散投資を行っている。アロケーションはTIPSが35%、米国債が15%、株式が25%、コモディティが25%。米国債を担保にレバレッジをかけているので、オールインの資産配分は100%を超過する。
MNA
IQ Merger Arbitrage ETFは買収ターゲットのロングと世界の株式インデックスのショートを組み合わせる合併裁定戦略を取るファンド。買収や合併、バイアウト関連取引のターゲットとされている株式をロングする運用方法は我々のイベントドリブン投機ポジションに応用できる。
ADME
Aptus Drawdown Managed Equity ETFは米国株式とREITに投資するアクティブファンド型ETFだが、下落時にはブロードマーケットプットやVIXコールオプションを利用することで、リスクヘッジを行う。こうしたオプションを利用したリスクヘッジは投機の基本なので、いざというときに取引できるように、普段から少額でいいので練習しておくことを推奨する。上位組入銘柄はApple, Microsoft, Amazon, Alphabet, Facebook, UnitedHealth, Visa, Adobe, Dollar General, American Tower
RYLD
Global X Russell 2000 Covered Call ETFはラッセル2000指数を保有しながら、同指数のアット・ザ・マネー(ATM)のポジションをとるETF。原資産に対してカバードコール(バイライト)戦略をとることで収益を安定化させる。これも投機ではよく使う方法なので、練習しておくとよい。
FVC
First Trust Dorsey Wright Dynamic Focus 5 ETFはモメンタム投資を軸にしたETF。モメンタム投資というのは、価格上昇中の株やセクターに投資することで、その後の上昇の恩恵を受けようとする投資スタイル。直感的には極めて知能指数の低い投資スタイルのようにも見えるが、過去6ヶ月間上昇した株は、その後の6-18ヶ月にベンチマークを上回るリターンが得られる蓋然性がある(ポジティブなリスクプレミアムを生み出す)という学術研究の結果に基づいたまっとうな戦略(なぜなら、リターンには正の自己相関があるから)。FVCのように、マルチアセット戦略をとることで、リスク調整済みリターンが改善されるというレポートも出ている。要するに、アセットアロケーションにモメンタム指標を考慮しようということ。このレポートによると、4~12ヶ月のルックバック期間で継続トレンドは約5ヶ月続くとされている。
PHDG
Invesco S&P 500 Downside Hedged ETFはS&P500に投資するとともに、市場急落時のヘッジ手段としてVIX先物を保有している。ADMEとほぼ同様の投資戦略。
WTMF
WisdomTree Managed Futures Strategy Fundは、定量的な手法を用いて絶対リターンを追求するCTA戦略を取っている。
RLY
SPDR SSgA Multi-Asset Real Return ETFは、定量的な手法を用いてインフレ率を上回る利益率を達成するようなCTA戦略を取っている。