機関投資家動向
中国人民銀行(中央銀行)は過去1年で、政策金利を2度引き下げたが、融資の伸びは今年1月、記録的低水準となった。信頼感の欠如が消費者と企業の現金保有に拍車をかけており、金融政策が経済を刺激できないのではとの懸念を抱くアナリストも出てきている。「流動性のわな」に陥りつつある最初の兆しかもしれない。
指標の中国国債利回りは2002年以来の低水準となり、政策金利に敏感な短期金利スワップは、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)が発生した20年の水準に近い。
オーストラリア・ニュージーランド銀行(ANZ)の大中華圏担当チーフエコノミスト、楊宇霆氏は「実体経済の活動がますます金融政策に反応しなくなっている。流動性のわなのリスクが迫っているとしか言いようがない。物価が下がるにつれ、世帯も企業も支出を先送りし貯蓄を選ぶだろう」と述べた。
中国の優良企業株は、逃避需要や政府系ファンドによる買い支えによってアウトパフォームしたため、中国農業銀行のような銘柄に投資するルールベースのファンドは株式市場の混乱を乗り切った。クオンツ取引の一例を挙げると、中国大型株のロング取引とショート取引を行うブルームバーグ作成のポートフォリオの年初来リターンは、プラス約15%となっている。
しかし、中国株売りの中心となった小型株に投資するクオンツトレーダーにとって話は別だ。小型株で構成されるCSI2000指数は2月前半に付けた安値から回復しているものの、依然として年初来で約16%下落。一方、大型株から成るCSI300指数は年初来で約2.5%の下げにとどまっている。
米上場のレイリアント・クオンタメンタル中国株ETFは今年に入り、CSI300指数のパフォーマンスをドルベースで2ポイント上回っている。クオンツ大手AQRキャピタル・マネジメントの中型株と大型株を取引する中国A株ポートフォリオも、年初来でプラスとなっていると、事情に詳しい関係者1人が匿名を条件に明らかにした。ボラティリティーの低い中国株に特化したロベコのファンドは、年初来でプラス5%の成績を上げている。
米プライベートエクイティー(PE、未公開株)投資会社ブラックストーンの富裕層向け不動産投資信託(REIT)は、投資家への返金を2月分についてはついに制限なく認めた。現金確保を求める投資家の圧力が和らぎつつあることを強く示唆する動きだ。
600億ドル(約9兆円)規模の「ブラックストーン・リアル・エステート・インカム・トラスト(BREIT)」は1日、解約請求額が主要な目安を下回ったと明らかにした。これは投資家の請求額を全額返金できることを意味する。
イジー・イングランダー氏率いるヘッジファンド運営会社ミレニアム・マネジメントは、2023年に商品(コモディティー)への投資で約6億ドル(約900億円)を稼いだ。事情に詳しい複数の関係者が明らかにした。世界最大級のヘッジファンドの一部は、商品投資でリターンを拡大させている。
関係者のうち2人によれば、天然ガスと電力取引の堅調なパフォーマンスなどが寄与した。ミレニアムの昨年のコモディティー投資利益は前年とほぼ同規模だったという。ミレニアムはコメントを控えた。
アルトマン氏の資産は株式非公開企業への投資がほとんどで、その源泉は不透明だ。マスク氏の医療ベンチャー、ニューラリンクにも出資しているが具体的な数字は開示されておらず、今回の資産推定額には算定されていない。
アルトマン氏のベンチャー投資のなかでは、核融合企業のヘリオン・エナジーへの5億ドル投資や、人間の平均寿命を10年延ばすことを目指すレトロ・バイオサイエンシズへの1億8000万ドル投資が、知名度は低いものの際立つ存在だ。
人工知能(AI)を巡る熱狂はウォール街のベテランに不意打ちを食らわせている。ストラテジストらは、2024年当初の株価予想をすでに超えている相場の上昇に追いつこうと躍起になっている。
S&P500種株価指数は23年に年間で24%上昇した後、今年は約7%上昇している。ウォール街ではすでに5社が同指数の見通しを上方修正。過去1週間だけでもパイパー・サンドラー、UBSグループ、バークレイズが予想を引き上げた。
UBSグループはS&P500種の年末目標水準を5400に上方修正。昨年12月に発表した24年末予想の上方修正はこれで2度目となる。5400はエド・ヤルデニ氏率いるヤルデニ・リサーチと並んでウォール街の金融機関では最高水準。
UBSのチーフ米株ストラテジスト、ジョナサン・ゴラブ氏は「この仕事を20年ほどしてきたが、こんなことは初めてだ」と語った。
パイパー・サンドラーのマイケル・カントロウィッツ氏は昨年、ウォール街で最も弱気な米株見通しを示していた。しかし先週にはS&P500種の見通しを5250に上方修正。これは一部の強気派の予想さえ上回る水準だ。HSBCホールディングスのマックス・ケトナー氏は今週に入り、米株見通しを先月引き下げたことは「間違い」だったと顧客向けリポートで釈明。AI相場を正確に予想できなかったとした。
米金融当局が高金利長期化のシグナルを発しているにもかかわらず経済が堅調を維持していることも、多くのストラテジストにとって大きな驚きとなっている。エコノミストは今後1年間のリセッション(景気後退)入り確率を40%と見ており、これは2022年以来の低水準。2023年上期には65%だった。
バークレイズの米株戦略の責任者、ベヌ・クリシュナ氏は「我々が目の当たりにしているのは、歴史的な経験とは全く異なる独特な状況だ」と語った。
世界最大の上場ヘッジファンド会社、英マン・グループは、運用資産残高が過去最高を更新した。約1年ぶりの四半期資金流出が運用収益で相殺された。
29日の発表によると、2023年末時点の運用資産は1675億ドル(約25兆1000億円)に増加。10-12月(第4四半期)の資金フローは3億ドルのマイナスとなり、年間の純流入額は30億ドルに縮小した。
2月28日終了週の内訳を見ると、主にTBや現先取引、政府機関債などの証券に投資するガバメントMMFの資産は457億ドル増えて4兆9180億ドル。コマーシャルペーパー(CP)など相対的にリスクの高い資産に投資する傾向があるプライムMMFの資産は55億ドル増の1兆210億ドルとなった。
米小売り大手ウォルマートの創業家ウォルトン一族は、先週末に15億ドル(約2260億円)相当のウォルマート株を売却した。同社の株価は最高値付近で推移している。
ウォルトン・ファミリー・ホールディングス・トラストは約882万株を2月21-23日に売却した。米証券取引委員会(SEC)への23日遅くの届け出で明らかになった。届け出はアリス、ジム、ロブ・ウォルトン氏を代表したもの。
大手のマルチ戦略ヘッジファンドが支配力を強めている業界にあって、多くの中小のヘッジファンドは苦境に置かれている。データ提供会社イーベストメントの集計データに基づくと、ヘッジファンドの投資家は過去2年間にそれぞれ年1000億ドル強ずつを引き揚げた。
カールソンの運用資産額は2月1日時点で9億6600万ドル。20年半ばは50億ドル、16年は最大90億ドルに上っていた。ブルームバーグが投資家向け文書で確認した。
著名投資家ウォーレン・バフェット氏が率いる投資・保険会社バークシャー・ハサウェイは、手元現金水準が過去最高を更新した。バフェット氏は、「目を見張るような業績」を達成できるような有意義な案件がないと指摘した。
バークシャーは近年、米保険会社アリゲニーを116億ドルで買収。米石油・天然ガス会社オキシデンタル・ペトロリアムの持ち分を増やした。これについてバフェット氏は24日、「無期限で」保有する予定だが、買収したり経営権を握ったりする計画はないと述べた。
バークシャーはまた、昨年日本の商社5社の持ち株比率を高めた。これらの投資によるバークシャーの昨年末の未実現利益は80億ドルで、投資リターンは61%だったという。
米テクメリオン・キャピタル・マネジメントは、自社のマクロヘッジファンドを英ブレバン・ハワード・アセット・マネジメントのプラットフォームに移管し、ブレバンおよび自らの顧客の資金を運用する方針だ。
欧州最大の運用会社であるアムンディ・アセット・マネジメントは、日本株と円相場がますます強くなるとみている。
グローバル株式戦略の責任者であるエリック・ミジョット氏はブルームバーグのインタビューで、日本の株式市場は過去最高値を更新し、円は今後12カ月の間に対ドルで上昇すると予想され、海外投資家にとっては為替ヘッジをかけない方がより多くの利益を得られるとの見方を示した。
ミジョット氏は、円は40%過小評価されていると見ており、「リスクはどこから来るか分からない」と語った。同氏によると、円高進行のきっかけとなり得るのは日本銀行によるマイナス金利政策の解除ではなく、米連邦準備制度理事会(FRB)による米国の利下げだ。
ミジョット氏は、日銀は4月までにマイナス金利を解除し、FRBは5月か6月に利下げに動くと予想。「もしFRBが動けば、日本は既に世界の関心を集めており、プラスになる」とみている。
円と日本株の間には強い逆相関があり、さらなる円安を期待するドルベースの投資家にとってヘッジは依然魅力的なオプションだ。円安進行のヘッジにかかる3カ月間のコストはマイナス5.6%となっており、大幅な円高にならない限りは円弱気派が利益を得る状況を示している。ブルームバーグがまとめた市場関係者の予想では、円は24年末に対ドルで137円まで上昇する見通し。
アムンディのミジョット氏は、日本株市場は企業利益の増加やコーポレートガバナンスの改善、デフレ脱却から恩恵を受けると予想。同社ではガバナンスの変化で恩恵を受ける銘柄や高配当利回り銘柄を選好しており、円高は内需関連の小型バリュー(割安)株にとってプラスになるともみている。
2023年のヘッジファンドのベスト戦略がメインストリームの投資家も引き付けているが、その戦略がよりどころとするリスクモデルは解読がはるかに難しくなっている。
カタストロフ(CAT)債を中心とする保険リンク証券(ILS)にその戦略は関係している。 23年にはフェルマー・キャピタル・マネジメントやテナックス・キャピタルが過去最高の運用成績を残し、ヘッジファンドにとってこれほど投資パフォーマンスの良い資産クラスは他に見当たらなかった。
一世代に一度起きるかどうかという自然災害に関係する損害から保険会社を守るためCAT債は伝統的に利用されてきたが、保険ブローカーのエーオンによれば、そのような「プライマリーペリル(危険)」が世界全体の損害に占める割合は昨年14%にとどまった。
動向を注視するファンドマネジャーによると、主に破壊的被害をもたらす雷雨など、いわゆる「セカンダリーペリル」は、CAT債のリスク評価を目的とするモデルで捉えられない場合がある。
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