機関投資家動向
GIC:推定運用資産7700億ドル
シンガポールの政府系ファンド、GICのジェフリー・ジェンスバキCIOは、金利の「より長期にわたる上昇」による企業財務の圧迫や地政学的問題、人工知能(AI)が企業に迫る高コストの調整といったリスクが高まる1年になると予想。これは資本を必要とする企業向けに信頼できる貸し手となる機会が増えることを意味するという。
ジェンスバキ氏は「金利上昇と与信の利用可能性の逼迫(ひっぱく)により、プライベートクレジットの新展開が注目される」と述べ、実物資産によるインフレ・ヘッジが引き続き重要だと付け加えた。また、「不動産では、物流や学生寮、サービス業のファンダメンタルズは引き続き底堅い」との見方も示した。
さらに、気候変動リスクが高まり続ける中、GICはエネルギー転換に役立つ投資に注目している。
ピクテ:2500億スイスフラン(約43兆円)
ピクテ・ウェルス・マネジメントのセサル・ペレス・ルイスCIO兼投資責任者にとって、エネルギー自給と気候変動対策の推進は取引の重要テーマだ。ただ、それはソーラーパネルや電気自動車(EV)のような自明の分野に結びつくものではないという。
「私が買いたいのは受益者だ。つまりデジタル化を進める企業やインフラ投資を行う企業だ」と述べ、電力設備メーカーのシュナイダーエレクトリックを例に挙げた。
また、中国の不動産や消費、テクノロジー企業がいずれも不安定な動きを続けている中、ルイス氏は中国の見通しに引き続き慎重姿勢で、10年以上前のスペイン住宅危機と多くの類似点があり、現在もその影響が続いていると指摘。「世界の他の地域を好む」と述べ、欧州と日本が投資対象として魅力的な市場であり、特に日本の国内市場向けのデジタルサービス企業や娯楽や消費、ロボット関連企業に妙味があると付け加えた。
テマセク:3820億シンガポールドル(約42兆円)
シンガポールの政府系投資会社テマセク・ホールディングスは、米利下げ観測は米国市場に対して「建設的」だと受け止めており、金融状況の緩和はリセッション(景気後退)リスクを低下させるとロヒト・シパヒマラニCIOは述べた。
シパヒマラニ氏は「特定のセグメントには魅力的な投資機会があるが、バリュエーションの観点からは指数レベルで大幅上昇が見られる可能性は低い」と予想。バリュエーションが「やや伸長している」もののインドを選好しており、東京証券取引所の改革などもあって日本に魅力を感じていると述べた。
ヘッジファンド会社、キューブ・リサーチ・アンド・テクノロジーズがドイツ企業の株式を10億ドル(約1480億円)以上空売りしていることが分かった。世界的な需要減退で独経済は減速している。
2018年にクレディ・スイスから独立したキューブは、昨年約110億ドルを運用。クオンツシグナルを活用し、株式、債券、コモディティーなどの市場でポジションをとっている。
中国当局は、大きく売り込まれた株式市場を安定させるため取り組みを強化している。市場のベテランの少なくとも1人によれば、中国株はバリュエーション(株価評価)が2021年のピークから大きく低下したため「世界で最善のバリュー投資対象」だという。一方で、そうとは納得していない人もおり、経済が直面するいくつかの厳しい課題が株価の足かせになり続けるとみる。今は黄金の瞬間なのか、それともバリューのわながかけられた状態なのだろうか。
投資家は中国の民間セクターに対する締め付けが本格化した21年に株売却を始めた。ゼロコロナ政策は市場心理をさらに悪化させた。22年終盤から23年早々にかけ、中国の経済活動再開で株価は力強い反発を見せたが、楽観論はほとんど消えた。
不動産不況の長期化やデフレ圧力の高まり、対米関係の緊張、人口減少などの構造的問題は、投資家に市場の長期的な可能性を疑わせている。
ハンセン中国企業株指数は現在、予想株価収益率(PER)が約6.5倍と、5年平均の8.5倍を下回っている。これに対し、ここ1年に大きく値上がりしたS&P500種株価指数やインドのニフティ50指数の予想PERは20倍前後だ。中国株のこのような低いバリュエーションでは、理論的には上昇の可能性が高い。
国家ファンドによる上場投資信託(ETF)の購入や株式取引印紙税の引き下げ、新規株式上場の制限などの措置はせいぜい短期間の相場反発しかもたらさなかった。
反発の兆しが見え始めた市場に参入することは心をそそられるが、懐疑論者は根本的なところは何も変わっていないと警鐘を鳴らす。不動産市場を復活させ消費者に支出を促し、デフレスパイラルを防止する方法を中国はまだ見いだせていない。今度の決算シーズンは精彩を欠く可能性が高い。
数年にわたる中国株安で何度もやけどした投資家は、一度かまれて用心深くなっている状態だ。中国当局の政策が気まぐれに変更され得ることを十分承知しており、景気刺激策が迫力に欠ければ再び失望させられると警戒している。ピクテ・アセット・マネジメントは、中国は割安だが、まだ前向きな変化に欠けると指摘する。
ただ、世界2位の経済大国としての中国の潜在力を信じる人々は、楽観的になる理由があると考える。調査会社ゲイブカルの創設者、チャールズ・ゲイブ氏は、売りたたかれた中国株が今や世界で最高の投資価値を提供していると言う。
確かなのは、未知のリスクにまみれた中国株市場は、勇者のための場所となっているということだ。
「iシェアーズMSCI中国ETF」や「Xトラッカーズ・ハーベストCSI300中国A株ETF」、「クレーンシェアーズCSIチャイナ・インターネット・ファンド」など、海外に上場するETFを購入することもできる。
その他の選択肢としては、投資信託や米国預託証券(ADR)への投資などがある。アリババグループ・ホールディングや百度(バイドゥ)、JDドットコム(京東)などの大手ハイテク企業はすべてADRを上場している。
2024年の販売台数の伸びが鈍化するとの見通しを示した米電気自動車(EV)メーカー、テスラの株価が25日に急落。時価総額では800億ドル(約11兆8000億円)が吹き飛び、肥満症治療薬が人気の米イーライリリーに抜かれた。
リリーが時価総額でテスラを最近抜いた企業の一つであることは、市場の投資意欲の変化を示している。かつてのように投資家がEVの大量普及を期待してEVメーカー・サプライヤー銘柄を買うことはなくなった。代わりに減量関連銘柄が人気を集めている。
リリーの株価は糖尿病治療薬「マンジャロ」と肥満症治療薬「ゼップバウンド」への期待から急騰し、時価総額で世界最大のヘルスケア企業となった。デンマークのノボ・ノルディスクも糖尿病・肥満症治療薬に同様の期待が膨らみ、欧州で時価総額トップになっている。
インタラクティブ・ブローカーズのチーフストラテジスト、スティーブ・ソスニック氏は「市場は大きくて幅広いトレンドを好む傾向があり、確かに一時期はEV、とりわけテスラはこうしたトレンドの一つだった」とした上で、「今、投資家の心をつかんでいるトレンドは人工知能(AI)とGLP-1受容体作動薬だ」と指摘した。
資産家イジー・イングランダー氏率いるマルチ戦略ヘッジファンド、ミレニアム・マネジメントが、メリディエム・キャピタル・パートナーズに運用を委託していた資金を引き揚げた。
マルチ戦略ファンドは、幅広い資産クラスへの投資で数十に上るトレーディングチームに依存する。増加する資産の運用で活用できる人材を広げるため、外部のトレーダーに資産を配分するようになっている。
事情に詳しい複数の関係者によると、ミレニアムは、ハーリド・マリク氏率いるメリディエムとの合意をロックアップ期間終了後に解消した。2021年の合意で15億ドル(約2200億円)の資金運用を委託していた。契約の非公開を理由に匿名を条件に語った。
ミレニアムは610億ドルの資産を320余りのチームに運用させており、メリディエムは外部の運用委託先の一つだった。こうした外部との委託契約は、ミレニアムが活用するトレーダーチームの10%未満。外部の委託先の多くは、ミレニアムの資金のみを運用している。
マリク氏はシタデルの元ポートフォリオマネジャー。リンクトインのプロフィルによれば、スティーブ・コーエン氏が率いていたヘッジファンド、SACキャピタル・アドバイザーズに勤務した経歴もある。
ファンドマネジャーのデビッド・バロン氏は、テスラがやや足踏みした後に再び驚異的な値上がりを見せると見込んでいる。
ただ、こうしたバロン氏の強気な見方には目下、激しい逆風が吹いている。テスラは24日、今年の成長ペースが「著しく鈍化」するとの見方を示し、株価が急落。年初から25日までに2090億ドル(約30兆9400億円)の時価総額が吹き飛んだ。
ヘッジファンド、ブレバン・ハワードのチーフエコノミスト兼調査責任者であるジェーソン・カミンズ氏によれば、24年においても23年と同様に、世間一般の見方は間違っている。
カミンズ氏はブルームバーグのポッドキャスト「オッド・ロッツ」とのインタビューで、米労働市場は既に急激に減速しており、金融政策は極めて景気抑制的な状態にあると主張。この組み合わせでは、次のリセッションが避けられないとの見方を示した。
米連邦準備制度は健全な労働市場と安定したインフレを維持するという二つの使命のうち、雇用面に関しては既に「火遊び」をしているという。
「今の労働市場を注意深く見れば、雇用が止まったことが分かる」とカミンズ氏。「もし労働参加率が前回の報告で0.3ポイントという大幅な低下をしていなければ、失業率は0.3ポイント上昇して4%になっていただろう」と同氏は説明した。
香港株の「恐怖指数」が23日に低下した。前日には5カ月ぶりの高水準を記録していたが、中国株式市場の新たな下支え策に対する期待で地合いが改善した。過去の経緯を踏まえると、相場持ち直しはもう少し続くかもしれない。
24日の香港市場で、中国の電子商取引最大手アリババグループの株価が半年ぶりの大幅高となった。共同創業者で資産家の馬雲(ジャック・マー)氏が自社株を購入したためで、社内の混乱と株式市場の低迷を乗り切ろうとしている同社にとって待望の追い風となっている。
インド国債がグローバル債券指数に組み入れられることで、今後数年間で海外から約1000億ドル(約14兆8000億円)の資金が流入する可能性が高い。HSBCアセット・マネジメントが指摘した。
HSBCアセット・マネジメントのインド部門の債券担当最高投資責任者(CIO)、シュリラム・ラマナサン氏はインタビューで、インド国債のグローバル指数への組み入れが最大500億ドルの流入の引き金となる可能性がある一方で、大手機関投資家、政府系ファンド、年金基金などからも同程度の資金流入が見込まれると述べた。
チュア氏が率いるアジア・ジェネシス・アセット・マネジメントは今週、3億3000万ドル(約490億円)のファンドを閉鎖すると投資家に伝えた。日本株のショートが裏目に出たことに加え、中国株の下落が大きな痛手となったことを理由に挙げた。中国株の低迷は習近平国家主席をはじめとする政策当局者の無策に主に起因すると主張した。
同氏は「深い反省と共にしたためた」顧客宛て書簡で「トレーダーとしての自信を失った」と打ち明けている。今月に資産の19%近くを失ったファンドは残りの資金を投資家に返還する。
世界的な投資会社であるティー・ロウ・プライス・グループは、保有する中国株の価値がピーク時からの数年間で80%も下落している。
ティー・ロウの国際株式部門責任者、ジャスティン・トムソン氏は「目の前にある証拠は全て、経済データが私および誰もが思っていたよりもずっと弱いことを示している」と語った。
レイ・ダリオ氏のヘッジファンド会社、ブリッジウォーター・アソシエーツは中国株について「中程度に強気」だ。長期低迷によりバリュエーションが魅力的になっているとの見方だ。
事情に詳しい関係者によると、同社の中国プライベートファンド運用部門は今月初めのロードショーで現地の投資家に対し、株式は保有する価値があると説明。同部門は債券に対しても「中程度に強気」で、成長を支えるために緩和的な政策が続き金利低下の余地があると解説したという。
ブリッジウォーターはコモディティーに対しては「中程度に弱気」だという。不動産セクターのレバレッジ圧縮で工業用金属に対する圧力が続いていることが一因だと関係者が述べた。
米銀シティグループのジェーン・フレーザー最高経営責任者(CEO)は、著名投資家ウォーレン・バフェット氏との昼食会に臨む機会が最近あり、シティの組織再編の取り組みを継続するようバフェット氏から言われたことを明らかにした。
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